多くの人が行き交う国際通りの起点、県庁北口交差点。リウボウを右手に歩いていくと、三角形の特徴的なビルが見えてくる。琉球新報本社ビルだ。そのエントランスホールの一角で、毎週水曜日に開催されているイベントがある。

新聞社というお堅いイメージのある場所で繰り広げられているのは、なんと「お笑い」ライブ。
今回は、そんな一風変わったイベントに足を運んだ。
沖縄の芸人といえばこの人だ!
本イベントの正式なタイトルは、「ニュースペーBar 泉崎コメディクラブ」。新聞社だけに、ニュースペーパーとかけた、なかなかオシャレなタイトルだ。
このイベントのメインMCを務めるのが、沖縄のお笑い事務所FECに所属する、まーちゃんだ。
FEC創設時から芸人として活動してきたまーちゃん。その代表的な活動の一つが、沖縄が抱える問題を笑いに変えた「お笑い米軍基地」だ。米軍基地という重いテーマを扱いながら、それを笑いへと変えてきた。
芸人としての活動歴は30年以上となり、ベテランの域に入っている、「ザ・オキナワン・ローカルスター」な人物だ。
まーちゃんのプロフィール
小波津正光
お笑い米軍基地主宰
沖縄のお笑い芸人
芸歴は、1993年10月13日にスタート。
FEC事務所創設=まーちゃんの芸歴となる。
泉崎コメディクラブとは
「泉崎コメディクラブ」は、琉球新報に掲載された記事を題材に、ニュースを笑いへと変えるトーク&コメディイベントだ。
政治や社会問題、スポーツ、地域の出来事まで、その日の紙面から話題を拾い、まーちゃんと一代目琉球新報アンバサダーの大久保謙氏が軽妙なトークを繰り広げる。
中でも注目したいのが、まーちゃんが「沖縄版スタンダップコメディ」と名付けた「どぅ〜ちゅいむに〜」だ。
新聞紙面から気になる記事を拾い、「どぅ〜ちゅいむに〜」(沖縄の方言で「独り言」の意味)として、風刺の効いた一言を添える。このピリッと効いた風刺が、観客の心をつかみ、笑いが巻き起こる。
イベント冒頭のフリートークでは家族の話なども飛び出し、まーちゃんの素顔が垣間見える。
ゲストを招いてのトークや芸人の飛び入り出演など、回によって内容が変わるのも特徴だ。

前身となる「お笑いニュースペーBar」は2019年11月にスタート。コロナ禍による休止などを経ながら活動を続け、現在も人気のイベントとして開催されている。
新聞をただ読むのではなく、ニュースを笑い、語り合うきっかけとなっているイベントだ。
月末の水曜日には、沖縄でアコーディオン奏者やラジオパーソナリティとして活躍する、山原麗華さんも、二代目琉球新報アンバサダーとして登場し、美声を響かせてくれる。
実は、ナツメロ好きにもピッタリなイベントなのだ。
バースデーサプライズは成功するのか?「泉崎コメディクラブ」開幕!
この日、会場にはいつもの倍以上の観客が詰めかけていた。通常回でもほぼ満席になるイベントだが、この日の熱気はいつも以上だった。
それもそのはず、翌日は本イベントのメインMC、沖縄を代表する芸人である、まーちゃんの誕生日。スタッフの呼びかけで、バースデーサプライズが企画されていたのだ。
お客さんは、入り口でスタッフからクラッカーや飾り付け用の風船を受け取り、続々と着席していく。筆者もクラッカーを受け取り、席に着く。
この企画は、まーちゃんには完全シークレット。スタッフや関係者、お客さんだけが知っている。そんな秘密の共有が、より一層ワクワク感を駆り立てる。
ザワザワとする会場、ソワソワするお客さん。開演時間の18時半が近づいている。筆者の席からは、準備万端のまーちゃんの姿が、衝立の隙間から見えていた。

18時半、時間通りにオープニング曲が流れ、まーちゃんが登場すると、大きな拍手と指笛が起こる。登場した瞬間から拍手と笑顔。まーちゃんと客席との距離の近さが伝わってくる。
センターマイクの前に立ち、客席を見回したまーちゃんは開口一番、「凄い、いっぱい!ありがとうございます」とお客さんの入りに驚き、感謝の言葉を述べた。と同時に、常連さんや、久しぶりに見知った顔を見つけて声をかける。まーちゃんのお客さん思いな一面が垣間見えた。
と、ここで語り出した内容が、まさかの展開に。当日は大雨だった沖縄。そして、まーちゃんは、この日バイク移動だったことを話し始める。雨の中のバイク移動でびしょびしょになり、着替えがなかったところ、太客(まーちゃんの熱烈なファンを指す、本人考案の呼び名)の皆さんから誕生日プレゼントということで、アロハシャツをもらったというエピソードを感謝をまじえて話した。さらには、バースデーサプライズを企画したスタッフから、靴下をプレゼントされたことも。
まさかまさかの、なんと、本番のサプライズを前に、すでに別のバースデーサプライズが行われていたのだ。一瞬、「もしかして、企画がバレているのでは?」という緊張感が会場に走る。
しかし、その心配は杞憂に終わる。その後のまーちゃんのトークは、誕生日だということに気づいていなかったという話になり、台風の話へと進んでいった。
「台風が近づくとワクワクする」「台風の目に入ると外に出たくなる」といった沖縄県民あるあるに絡めつつ、仕事関係の先輩の面白いエピソード、そして家族のエピソードを、笑顔で楽しそうに語っていく。
15分ほど近況を面白おかしく語り、いよいよ本編へ——と思ったその瞬間、「ハッピーバースデートゥーユー」が流れ出した。
まーちゃんが驚きの表情を浮かべる。会場からは、「おめでとう」の声と拍手、クラッカーの音がわき起こる。
誕生日プレゼントを渡す人が列をなし、まーちゃんの誕生日を祝う。プレゼントの中には、なんとお米の差し入れも。それ以上に驚いたのが、まーちゃん家では毎日9合ものご飯を炊くという話。会場からも驚きの声が上がり、笑いがこぼれる。
プレゼントを受け取り、「本当に、皆さんありがとうございます」と感謝の言葉を述べる。だが、ここで終わらないのが、まーちゃんという芸人だ。
「今日決意しました。県知事選に出ます」
もちろん冗談だが、この一言で、会場からは再び拍手と指笛、笑い声が傍起こった。お客さんを喜ばせることを忘れない男、まーちゃんの真骨頂ここにあり、と言ったところだろう。
誕生日ケーキ、くす玉の授与と続き、最後はなんとお客さんから自作の歌のプレゼントまで。その人は、誰かの誕生日に歌をプレゼントしているそうで、今日はまーちゃんにプレゼントするため、近くのコーヒーショップで書き上げてきたのだという。

目の前で曲を披露され、笑顔のまーちゃん。一緒にリズムに乗り、楽しげな表情を浮かべている。お客さんと気さくに言葉を交わし、一人ひとりと丁寧に向き合うまーちゃん。その姿を見ていると、長年にわたって活動を続けてこられた理由の一端が分かるような気がした。
バースデーサプライズは見事に成功。お祝いムードのあたたかい空気に包まれながら、通常企画が進行していく。

まーちゃんの足元には、多くのプレゼントが置かれている。皆さんからの愛情があふれた光景だ。そんな中、まーちゃんはプレゼントの山を見ながら一言。
「おれ、バイクなんだけど」
誕生日祝いにも、しっかりオチをつけるまーちゃんだった。
ディープな沖縄を知りたいなら
新聞に並ぶニュースというと、どこか堅苦しいものに感じる人もいるかもしれない。
しかし「泉崎コメディクラブ」では、そのニュースが笑いの種になる。政治や社会問題、地域の出来事まで、まーちゃんのフィルターを通すと会場には笑いが起こる。
そして、この日の会場を包んでいたのは笑いだけではなかった。クラッカーを手にサプライズの瞬間を待つ人、プレゼントを抱えて並ぶ人、即興で歌を作ってきた人。そこには、まーちゃんとお客さんが長い時間をかけて築いてきた関係があった。

沖縄観光といえば、きれいな海や美味しい食事を思い浮かべる人も多いだろう。だが、観光地を巡るだけでは見えてこない沖縄もある。
新聞を広げ、ニュースを笑いに変え、みんなで笑う。
そんな沖縄に触れたいと思った人もいるだろう。そう、そんなあなたを琉球新報社が水曜日の18時半に待っている。
【イベント詳細】ニュースペーBar 泉崎コメディクラブ
開催日時:毎週水曜日
18時開場 18時30分開演
入場料 :500円+1飲食代
または
無料券+1飲食代
※入場の際には、当日の琉球新報をお渡しいたします。
※ゲスト出演について
イベント告知などがございましたら、出演いただけます。
ご希望の方は、以下にあるニュースペーBar泉崎コメディクラブのX・InstagramのDM、
または、スタッフのSNSまでご連絡ください。
ニュースペーBar泉崎コメディクラブ SNSアカウント
スタッフSNS
スペシャルサンクス
ニュースペーBar 泉崎コメディクラブは琉球新報のご協力のもと、開催させていただいております。
本イベントは、準備や後片付け、告知など、記者の皆さんをはじめ、琉球新報の皆さまのご協力を受け、快適な環境を整え、皆さまのお越しをお待ちしております。
来場いただくお客さまはもちろん、琉球新報の皆さまに、この場を借りて感謝の意を述べさせていただきます。